ーエアコンの原状回復のあれこれ｜退去時トラブルにならないためにはー

これから来る厳しい夏の暑さに欠かせないエアコン。実は、賃貸物件のエアコンにまつわる原状回復のトラブルは少なくありません。

 

退去時になってから揉めないためにも、賃貸物件の原状回復について正しく理解しておく必要があります。本記事では、エアコンにまつわる原状回復の疑問に答えていくので、ぜひ参考にしてください。

 

エアコンに対しての原状回復とは

原状回復とは、アパートやマンションなど賃貸物件を退去する際、経年劣化によるものは差し引いて、故意や過失による傷・汚れを復旧する義務のことです。国民生活センターによると、全国消費生活情報ネットワークシステムに登録された、原状回復に関するトラブル件数が、2022年度は12,856件にものぼりました。

 

このような原状回復に関するトラブルを未然に防ぐため、国土交通省によって定められたのが「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」です。

 

ガイドラインによると、たとえば、部屋を借りる段階で設置されていたエアコンを通常の範囲で使用して壊れた場合の修理や交換は、貸主の負担とされています。

 

しかし、入居者がクリーニング業者に依頼して内部洗浄をしたり自分で掃除したりしたうえで故障させてしまった場合は、入居者が修理・交換の費用を負担しなければなりません。

 

このように、エアコンの故障ひとつとっても、そこに至るまでの状況によって、費用負担の義務が誰になるか変わってしまいます。また、賃貸借契約書の特約によっても、ガイドラインとは違う見解になる場合もあるため、入居前からしっかり契約書を確認することが大切です。

 

賃貸物件に設置したエアコンの原状回復は必要ない？

まず、借りた部屋にエアコンがなく設置を検討する際は、大家さんか管理会社へ連絡しましょう。

 

エアコンを取り付けるためには、ビス穴や配管用の穴を開ける場合もあります。また、設置するエアコンによっては、エアコン用コンセントプラグの形状変更や専用回路の増設が必要な場合も。

 

「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」には、エアコンは生活必需品という扱いになり、原則、借主に原状回復費用の負担義務はないとされています。

 

とはいえ、勝手に工事をするとトラブルになったり退去時に高額な原状回復費用がかかったりする恐れがあるので、まずは大家さんや管理会社に確認することが大切です。

 

なお、自分で設置したエアコンは、基本的に、退去時、撤去しなければなりません。ただし、造作買取請求権という貸主に買い取ってもらう権利や、大家さんがエアコンを置いていくことを許可してくれる場合もあるので、もし、エアコンを置いていきたい場合は相談するのも一つの方法でしょう。

 

退去時のエアコンクリーニングは貸主負担？

「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によると、退去時のエアコンクリーニングは、原則、貸主負担です。しかし、タバコなどエアコンが汚れる原因が借主にある場合は、借主がクリーニング費用を負担する可能性もあります。

 

ただし、賃貸借契約書に特約が明記されている場合もあるので注意しましょう。もし、契約書に「退去時のエアコンクリーニングは入居者負担」などと記載がある場合は、支払わなければいけません。

 

契約書にサインをした段階で契約内容に同意したことになるので、退去時の決まりなども契約時にしっかり確認することが大切です。

 

ちなみに、借主には社会通念上、守るべき注意義務、つまり善管注意義務があります。エアコンの通常清掃はこの善管注意義務にあたり、怠った場合、修理やクリーニングにかかる費用を請求される可能性があるので、日ごろの掃除はしっかり行いましょう。

 

まとめ

賃貸物件に自分でエアコンを設置した場合、原状回復義務は貸主にあります。エアコンはいまや生活必需品として扱われ、それに伴うビス穴や配管穴は通常生活するうえで必要なキズとみなされるからです。

 

しかし、無用なトラブルを回避するためにも、エアコンを設置する前に、大家さんや管理会社に許可を取るようにしましょう。

 

また、退去時のエアコンクリーニングは原則、貸主負担です。ただし、タバコなどによる汚れや善管注意義務に違反した取り扱いによる故障などに関しては借主が費用を負担しなければいけないので、日ごろから注意して使用するよう心がけましょう。