原状回復とは?見積もりを取る前に知っておきたい基本
賃貸物件を退去する際に避けて通れないのが「原状回復」です。原状回復とは、借主が入居前の状態に近づけて返すための修繕や清掃のことを指します。しかし、実際にどの範囲までが借主の負担なのか、見積もりの項目が妥当なのか、判断に迷うことも少なくありません。
まずは原状回復の基本を押さえ、見積もりの内容を正しく理解できるようにしましょう。
借主が負担するべき内容とは
原状回復には「通常損耗(使っていれば自然に劣化する部分)」と「故意・過失による損傷(明らかに借主側の責任によるもの)」の2種類があります。前者については貸主側が負担するべきとされており、借主がすべての費用を負担する必要はありません。
一方で、壁に開けた穴やタバコのヤニ汚れ、ペットによるキズなどは借主の責任範囲になるケースが多く、これらは見積もりに反映されやすいポイントです。
国のガイドラインに基づいて判断する
原状回復のトラブルを防ぐため、国土交通省は「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を発行しています。このガイドラインを基準にすれば、どこまでが借主の負担かが明確になり、見積もり内容が適切かどうかも判断しやすくなります。
原状回復の見積もりの取り方とチェックポイント
原状回復費用の見積もりは、退去前後の重要な手続きのひとつです。トラブルを未然に防ぎ、納得のいく費用で済ませるためには、いくつかのポイントを押さえておくことが重要です。
複数の業者から相見積もりを取る
管理会社や貸主が指定する業者だけでなく、第三者のリフォーム業者やハウスクリーニング業者にも見積もりを依頼することで、相場がわかりやすくなります。相見積もりを取ることで、過剰請求に気づくこともあります。
見積もり書の内訳を確認する
見積もり書には「壁紙張替え」「ハウスクリーニング」「床補修」などの内訳が記載されています。これらの単価や面積が妥当か、必要な作業なのかを確認することで、不要な費用を削減することが可能です。
写真や記録を残しておく
入居時・退去時の写真や状態記録は、原状回復の妥当性を示す証拠となります。後になって「ここは破損していた」と主張されても、記録があれば反論が可能です。
費用を抑えるためにできること
原状回復費用は状況によって高額になることもありますが、工夫次第で抑えられるケースもあります。見積もり前にできる対策を知っておきましょう。
自主的な掃除や修繕で印象アップ
簡単な清掃や補修であれば自分で行うことで、業者による作業が不要になり、見積もりから除外される可能性もあります。特に、水回りのカビ除去や壁の小さな汚れ落としなどは効果的です。
入居時の契約書や特記事項を見直す
賃貸契約書には、原状回復の特約が記載されている場合があります。特約がある場合、ガイドラインよりも厳しい内容が適用されることもあるため、事前に確認しておくことでトラブルを回避できます。
退去立会い時にしっかり確認する
退去時の立会いでは、担当者と一緒に部屋の状態を確認し、どの部分が費用の対象となるかを明確にしておきましょう。その場で不明な点があれば質問し、曖昧なまま進めないことが大切です。
見積もりに関するよくあるトラブルと対処法
原状回復をめぐるトラブルの多くは、「見積もりの不透明さ」が原因です。ここでは、ありがちなトラブル事例とその回避法を紹介します。
相場より高すぎる費用を請求された
業者によっては、相場よりも高額な見積もりを提示してくることがあります。こうした場合には、相見積もりの提示やガイドラインの内容を根拠に交渉しましょう。また、消費生活センターに相談するのも一つの手段です。
借主の責任外の損耗まで請求された
通常損耗や経年劣化による損傷まで借主に請求されるケースもあります。こうした費用は本来貸主側の負担となるため、契約書やガイドラインをもとに反論し、必要であれば専門家の助言を仰ぎましょう。
見積もりに納得できないまま退去してしまった
事前に見積もりの詳細を確認せずに退去してしまうと、後で高額な請求が届くこともあります。必ず書面で見積もり内容を確認し、納得したうえで退去手続きを進めましょう。
安心して原状回復を終えるために
原状回復は借主にとって避けられない負担ではありますが、過剰な請求や不要な工事を回避するためには、見積もり段階での対応がカギとなります。ポイントは以下の通りです。
* 国のガイドラインに目を通す
* 相見積もりを取り、費用の妥当性を見極める
* 見積もり書の内訳に目を通し、不明点を確認する
* 契約書や特約の内容を理解しておく
* 自主的な掃除・補修で費用を抑える努力をする
これらを押さえることで、余計な出費を防ぎ、安心して原状回復を終えることができるでしょう。