不動産会社との賃貸契約を終了する場合、退去前にはハウスクリーニングを行い、場合によって原状回復工事・リフォームが必要です。今回は、「クロス」張り替えのときにトラブルになりがちな費用負担についてご説明していきます。
原状回復義務について
借主側に原状回復義務(費用負担)が発生しないのは「通常損耗」と「経年劣化」が挙げられます。基本的にどちらかの損耗は借主の負担範囲に入りません。
たとえば、日当たりの良い賃貸物件であれば、クロスの日焼けも通常消耗の範囲内です。経年劣化によりクロス貼りに使った糊による黄ばみについても借主ではなく貸主の負担範囲に該当します。
なお、借主が原状回復義務を負うことになるのは、故意・過失、善管注意義務違反などによる損耗です。
たとえば、クロスに落書きをしてしまったり、結露を放置したためにカビやシミが生じてしまった場合、原状回復義務を負うことになります。
では詳しく見ていきましょう。
原状回復をめぐるガイドラインによる耐用年数
賃貸物件のクロスの耐用年数は、原則として6年です。この耐用年数に関しては、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルのガイドライン」に記載されています。トラブルにつながらないように、賃貸契約前にしっかり目を通しておくことをおすすめします。
ここでは簡潔に説明しますが、入居して6年以上経過している場合には原状回復を行なうのは原則「貸主」となります。
しかし先に説明したように、故意・過失、善管注意義務違反などによる損耗ならば負担を負うことに変わりありません。
喫煙者の場合
タバコを吸う人が3年で賃貸物件から退去するなら、上記のガイドラインに則り、クロスの張り替え費用の負担割合は半分程度の請求になるでしょう。
さらに、6年以上経過している場合には、不動産価値も低下しているため、実質クロスの張り替え費用は貸主の負担になる可能性が高いです。
しかし、注意したいのはガイドラインの改定や賃貸契約書に記載される特約です。
これまでは、喫煙は用法違反や善管注意義務違反に該当せず、ハウスクリーニングで除去できる程度のヤニ汚れは通常損耗の範囲内でした。しかし、改定により、喫煙によってクロスについた汚れや臭いは、借主にも原状回復義務があるとされています。
そのため、退去するときにはクロスの全面張り替えが必要になり、その原状回復費用は借主が負担することが多いです。
張り替え費用について
原状回復義務を負うことになれば、張り替え費用も気になるでしょう。壁紙、天井クロスの張り替え費用は、1㎡あたり1,000~1,500円が相場です。グレードの低いクロスを選ぶことで安く施工できる場合もあります。
一般的に、6畳ほどの部屋全面を張り替える場合には4万円~5万円が相場です。ほかに、カビやシミ、穴などの修繕をする場合には5000円~の費用がかかります。
話し合いや確認
貸主、借主双方の話し合いで原状回復義務については解決するのですが、万が一、トラブルに発展しそうな場合には法律の専門家に相談しましょう。
また、原状回復に関するルールは入居するときの賃貸契約書に記載があります。入居前と退去前に必ず確認しましょう。
特に、先に紹介したように賃貸契約書には特約が記載されているケースもあります。特約は、不動産会社が特別に設けたルールです。ここを確認しておかなければ、退去するときにトラブルにつながりやすいです。
おわり
いかがでしたか。原状回復義務については、故意・過失などでなければ貸主が負担してくれます。ですが、賃貸物件は借り物ですから、きれいに使うことを第一に考えなければなりません。これから賃貸物件を探す人も、引越しを考えている人も、ぜひ、参考にしてみてください。